2021年12月3日金曜日
風に立つライオン
前から読みたい本にこの本が有りましたが、映画の方を先に見てしまいました。中村哲さんの偉業とロシナンテスのスーダン、行った事のあるザンビアで活動中の川原尚行さんと重なって感慨深いものがあります。
さだまさしが1987年に発表した楽曲「風に立つライオン」。アフリカ・ケニアで国際医療活動に従事した実在の日本人医師・柴田紘一郎をモデルに作られたこの曲は、日本に残してきた恋人に宛てた手紙を歌にのせ、壮大なスケールで綴る名曲です。その曲に惚れ込んだのが、俳優の大沢たかお。彼はこれまで、視力が徐々に失われていく難病“ベーチェット病”に侵された青年と恋人との絆を描いた「解夏(げげ)」(04年)、長年確執のある母と娘が、末期がんに侵された母が死後に自分の体を解剖学の実験材料として提供する“献体”を申し出たことから、すれ違ってきた二人の関係が修復されていく「眉山‐びざん‐」(07年)と、医療と人間をテーマにさだまさしが書き上げた小説の映画化作品に出演してきました。原作者との交流を深めてきたその大沢たかおが、「風に立つライオン」の小説化・映画化を熱望したことから、今回のプロジェクトは始まったのです。彼の願いを受けたさだまさしが、同名の小説を発表したのは13年。そして今年、大沢たかお主演による念願の映画版が遂に誕生しました。
物語の主人公は、長崎の大学病院からケニアの研究施設・熱帯医学研究所に派遣された日本人医師・航一郎。周辺で戦闘が続くこの地で、心に傷を負った元少年兵と出会った彼は、少年と真っ直ぐ向き合うことで医師としての生き方を見つめ直します。銃や地雷で負傷した人々が次々に運び込まれてくる過酷な医療の現場で、アフリカの大地に向かって「ガンバレッ」と叫び、自分を鼓舞しながら常に前向きに生きる航一郎を、原作者が彼をイメージしてキャラクターを作り上げたという大沢たかおがはまり役で演じています。その彼と共にケニアで懸命に働く看護師・和歌子に扮するのは、今年も「進撃の巨人」を始め、出演作が相次ぐ人気女優・石原さとみ。有能な看護師としての一面を持ちながら、やがて航一郎の優しい人間的な魅力に惹かれていく女性を演じます。もう一人重要なキャラクターが、原点となった曲にも登場する、主人公が日本へ残してきた恋人・貴子。アフリカ医療に生涯を捧げたシュバイツァーに感銘を受けて医師になった航一郎が、夢を叶えるためにケニアへ行くことを知りながら、自分は父親が経営してきた離島の個人病院を継ぐことで、医師として彼とは別の道を進もうとする貴子を、2014年の日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞と最優秀助演女優賞をW受賞した演技派・真木よう子が繊細に演じています。他にも航一郎と共にケニアで働く医師・青木に萩原聖人、貴子が心を通わせていく離島の漁師・田上太郎に鈴木亮平、航一郎の上司であるケニアの熱帯医学研究所所長・村上に石橋蓮司など、実力派の俳優が集結しました。
監督は、アクション大作「藁の楯 わらのたて」(13年)でも大沢たかおと組んだ三池崇史。世界が注目する鬼才が、これまで「黄泉がえり」(03年)や「余命1ヶ月の花嫁」(09年)、「抱きしめたい‐真実の物語‐」(14年)など、生きることにひたむきな人間たちの物語を感動的に描いてきた斉藤ひろしの脚本を得て、シュバイツァーから航一郎、そして次の世代へと受け継がれる人間たちの「希望」のドラマを、ケニアの美しい自然を背景に見事に紡ぎだしています。その他のスタッフには撮影・北 信康、照明・渡部 嘉、美術・林田裕至など三池組のベテランが揃い、日本とケニア、航一郎の少年時代(68年)から現在までを結ぶ、雄大なスケールの作品に仕上げました。一人の日本人医師がもたらす、人種も時間も超えた他人を思う心の奇跡を、是非その目で確かめてください。
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